フアイアについて調べている

中国の抗がん新薬「フアイア(Huaier)」は可能性がありそうな気がする

医薬品と食品の彼我【厚労省資料「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」より】

医薬品と食品は何が違うか。

医薬品は製造販売広告の管理に、厳密な法の規制を受ける代わりに、認められた「効果効能」を謳うことができる。食品は比較的自由だが効果効能を謳うことができない。それを想起させるような表現もかなり規制される。

「食品は医薬品と混同されないように」がお上の考え方である。食品であるからにして、個人が好みに応じてどれだけとってもよい。つまり「効果効能がない」と厚労省がお墨付きを与えたことになる。

さて、 無承認無許可医薬品の指導取締りについて、という書類がある。初出は昭和46年6月1日。各都道府県知事にあてて厚生省薬務局長が通知したものだ。以後数年に一度改定されて現在に至っている。

原文はこちら。https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/diet/dl/torishimari.pdf

当初は、冒頭にある通り、明らかに医薬品なのに、食品のフリをして流通しているものがあるから、それを医薬品の規制を受けさせるようにしたい、という趣旨のものであった。

月日が経ち、情勢が変わって来た。今では「効果効能がないのに医薬品のフリをして消費者を騙す」ようなシロモノが中心になったのだ。飲むだけで痩せる薬、アトピーが治るクリーム、ガンが消えるサプリメント…。

そこでこの資料が、食品の誇大な表現を抑えるための指針となっているのである。

また巻末に別添として、膨大な数の食品や栄養素の一覧がある。これがここの食品の効果あるなしの判断に使えるのである。

まず別添2。これは、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」である 。モノによってはある部位は「医」(=医薬品)で、別の部位は「非医」「非」(=食品)となっている。

一例:カッコン

根は「医」。種子・葉・花・クズ澱粉は「非」。葛とも書く。旺盛な繁殖力で、ツルが雑草地を埋め尽くして伸びていることがある。

このカッコンの根は葛根湯などに用いる生薬である。かぜ薬,解熱鎮痛消炎薬とみなされる処方に配合されていることが多い。しかし一方で、このカッコンから採取されたデンプンは葛湯などに用いる。ただのデンプンであるからにして、葛湯を腹一杯食ったところで調子が良くなるとか副作用が出るとかそういうことはない。まったくないわけではないかもしれないが、極めて少ない。

一例:アロエ

葉の液汁は「医」。根・葉肉は「非医」、キダチアロエの葉は「非医」。アロエヨーグルトに入っているのは非医の葉肉。これが葉の液汁を使うようになると食品の範疇をこえて医薬品領域になり、さらに厳しい規制を受けることになる。一方で既存のアロエヨーグルトは、アロエの薬効をイメージさせるような売り方はできない。買う方が勝手に体に良さそうだ、と思い込んでいるだけなのである。

アロエベラの葉の液汁、また表皮のすぐ下には、大腸を直接刺激して腸蠕動を促進させ、下痢をひきおこす下剤成分であるアロインが含まれている。これが医薬品。ヨーグルトに使用するのは、このアロインが含まれていない部分である。

一例:カワラタケ

菌糸体は「医」。子実体(よくみるキノコとしての形の状態)は「非医」。カワラタケの菌糸体培養エキスは、抗がん剤の原料になっていた。その後、薬効が認められず、製造もされていないのだが、その認可は取り消されていない。子実体は「非医」。スーパーで売っていたとしても、普通にキノコとして食べて薬効も問題もありませんよ、ということ。

面白いのはパイナップルで、これは明確に食品。しかし、食べ過ぎると舌がピリピリする。これはパイナップルに含まれる、パパインという消化酵素によるもので、舌や口内が負ったダメージは皮膚が再生されるまで有効な治療法はない。

この指針では、パパイン・ブロメライン等消化酵素は「医」になっている。パイナップルにはぜひ食べ過ぎに注意、1回に何切れまで、と書いておいてほしいものである。

さて、別添3の文書になると、「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」となり、名目の意味合いが変わってくる。これはつまり、その成分本質(原材料)は専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)ではないと判断したものであり、もし効果効能を標榜したり、想起させるようなことがあれば未承認医薬品として処罰の対象となるのである。

ここには、健康食品で効果がありそうだと思い込まされているものがいっぱい出てくる。

アガリクスクロレラ、シイタケ(菌糸体も)、スピルリナメシマコブ、軟骨…。これらは、食品であるからにして自由に売っていいし、摂取制限も特にない。効能効果があるように言っちゃ絶対にだめだよ、と言われているのである。残念ながら著者が愛するビール酵母もここでは食品扱いであった。

とにかく気になる栄養素や食品は一度参照してみることをお勧めする。