フアイアについて調べている

中国の抗がん新薬「フアイア(Huaier)」は可能性がありそうな気がする

【書籍紹介】がんの補完代替療法 クリニカル・エビデンス 2016年版

タイトルに掲げた書籍は、特定非営利活動法人 日本緩和医療学会
緩和医療ガイドライン委員会のチームがまとめたものである。

近年、がん医療の現場では、特に患者と家族サイドから補完代替療法を求められることが多く、患者の45%が何らかの療法を利用しているといわれている。

しかし標準治療とは異なる、この補完療法の分野はエビデンスとなる報告が少なく、また多くは保険適用外である。本書は、健康食品、マッサージ、アロマテラピー・マッサージ、運動療法ホメオパシー、アニマルセラピー、リラクセーション、音楽療法鍼灸治療、ヨガ等について、現時点で報告されているエビデンスを収集し、現場の医療従事者の助けとなるよう解説したものである。

2016年時点で、がんに効果のありそうなイメージを持たせる様々な健康食品、サプリメントが流通していたが、本書はエビデンスの観点から、治療(またはそれをサポートする)効果や副作用の軽減、精神的サポート、QOLの改善など幅広い領域で効果を検討している。一部を抜粋して紹介しよう。

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金原出版 発行

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文献検索の条件

米国国立医学図書館が運営する PubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed)を検索ツールとした。検索キーワードは,PubMed の MeSH の「Complementary Thera-pies」に掲載されている用語を原則として使用した。検索期間を 2000 年 1 月 1 日~2014年 12 月 31 日に設定した。対象とする文献は,システマティックレビューおよび無作為化比較試験とした。なお,文献数が多く,質の高いシステマティックレビューがすでに存在している場合は,システマティックレビューのみを検索対象とした。各施術・療法の検索結果はサマリーに記載することとした。文献の検索,スクリーニング,採択の判断は担当 WPG 員に任された。

臨床疑問1-1

健康食品は,がんに伴う身体症状を軽減するか?

1 痛 み
 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。
2 消化器症状
 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。
3 呼吸器症状
 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。
4 泌尿器症状
 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。
5 倦怠感
 現時点で,本臨床疑問に限定したシステマティックレビューの報告はない。悪液質に関連する内容については,後述の「7)その他」を参照。
6 睡眠障害
 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。
7 その他
1 )体重減少
 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが 2 件ある。
 Baldwin ら1)によるシステマティックレビューでは,栄養指導などの介入による 12 件の無作為化比較試験のメタアナリシスで meandifference(MD):1.86kg〔95%信頼区間(CI):0.25~3.47〕と体重増加を認めたが異質性が高かったため(I2=76%),7 件の無作為化比較試験で再解析(I2=0%)した結果,MD:0.31(95%CI:-0.60~1.21)と統計学的有意差はなくなった。
 Meji ら2)によるシステマティックレビューでは,ω—3 脂肪酸を用いた 7 件の無作為化比較試験のうち 3 件において体重増加を認めたが,4 件においてはプラセボと比較して統計学的有意差を認めなかった。
 以上より,栄養学的介入およびω—3 脂肪酸が,がん患者における体重減少の改善に有用であるとは結論づけられない。

2 )悪液質
 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが 2 件ある。
 Ries ら3)によるシステマティックレビューでは,3 件のシステマティックレビュー,27件の臨床試験(無作為化比較試験 10 件,比較臨床試験/ケースシリーズ 11 件,用量設定試験 4 件,その他 2 件)にて,主にω‒3 脂肪酸による悪液質への影響について文献的考察を行っている。その結果,小規模の無作為化比較試験や比較臨床試験/ケースシリーズなどでは有効性が示唆されたものの,大規模の無作為化比較試験では有効性が確認できなかったとしている。有害事象については,腹部不快感,魚臭の噯気(げっぷ),魚の後味,悪心,下痢などの報告があったとされるが,重篤なものはなかったとしている。また,当該報告は European Palliative Care Research Collaborative(EPCRC)による悪液質ガイドライン計画の一環として取り組まれており,そのため著者らは,結論としてω‒3 脂肪酸の悪液質に対する推奨度を“weak negative GRADE recommendation”としている。
 Colomer ら4)によるシステマティックレビューでは,18 件の臨床試験(無作為化比較試験 9 件,比較臨床試験 9 件)にて,主にω‒3 脂肪酸による悪液質への影響について文献的考察を行っている。その結果,1.5 g/日超のω‒3 脂肪酸〔エイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)〕投与は悪液質の病態,症状の改善に寄与する可能性があることを示唆している。
 しかしながら,いずれのシステマティックレビューもメタアナリシスは行われていない。 以上より,ω‒3 脂肪酸が,がん患者の悪液質を改善するとは結論づけられない。

臨床疑問 1‒2

健康食品は,がんに伴う精神症状を軽減するか?
1 不 安
 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。
2 抑うつ
 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。
3 その他
 現時点で,本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。

臨床疑問 1‒3

健康食品は,全般的な QOL を改善するか?

 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが 1 件ある。
 Baldwin ら1)によるシステマティックレビューでは,栄養指導などの介入による 9 件の無作為化比較試験のメタアナリシスで,European Organization for Research and Treatment of Cancer global quality of life scale を用いた QOL 評価において MD:24.095%CI:14.3~33.72)と改善を認めたが,異質性が高かったため(I2=98%),5 件の無作為化比較試験で再解析(I2=27%)した結果,MD:5.53(95%CI:0.73~10.33)と MDは小さくなったものの統計学的有意差が認められた。
 以上より,栄養指導などの介入は,がん患者の全般的な QOL を改善する可能性がある。

(中略)

臨床疑問 1‒6

健康食品は,予後を改善するか?

1 全生存率(total mortality)
 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが 4 件ある。
 Harris ら18)によるシステマティックレビューでは,5 件の無作為化比較試験にて,乳がん患者(診断後)へのビタミン C サプリメント投与による全生存率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡の相対リスクは 0.81(95%CI:0.72~0.91,n=13,203)であった。
 Baldwin ら1)によるシステマティックレビューでは,がん患者への栄養指導などの介入による 15件の無作為化比較試験でメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡率のリスク比は,1.06(95%CI:0.92~1.22,I2=0%)と統計学的有意差を認めなかった。
 Buttigliero ら19)によるシステマティックレビューでは,3件の無作為化比較試験にて,進行前立腺がん患者へのビタミン D サプリメント投与による全死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡率のリスク比は 1.07(95%CI:0.93~1.23,異質性:高)であった。
 Davies ら20)によるシステマティックレビューでは,がん患者への健康的な食生活の指導(無作為化比較試験 7 件),抗酸化サプリメント投与(無作為化比較試験 7 件),レチノール投与(無作為化比較試験 4 件)による全死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡のオッズ比は,健康的な食生活の指導で 0.90(95%CI:0.46~1.77,I2=18.6%),抗酸化サプリメント投与で1.01(95%CI:0.88~1.15,I2=0.0%),レチノール投与で 0.97(95%CI:0.83~1.13,I2=0.0%)であった。
 以上より,健康食品の一部(ビタミン C)が,がん患者の全生存率の改善に寄与する可能性が示唆されるものの,今後さらなる研究が求められる。

2 原因特異的死亡率(cause‒specific mortality)
 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが 2 件ある。
 Harris ら18)によるシステマティックレビューでは,6 件の無作為化比較試験にて,乳がん患者(診断後)へのビタミン C サプリメント投与による乳がん特異的死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,全死亡の相対リスクは 0.85(95%CI:0.74~0.99,n=13,423)であった。
 Davies ら20)によるシステマティックレビューでは,がん患者への健康的な食生活の指導(無作為化比較試験 3 件),抗酸化サプリメント投与(無作為化比較試験 2 件),レチノール投与(無作為化比較試験 3 件)によるがん特異的死亡率への影響についてメタアナリシスを行っている。その結果,がん特異的死亡率のオッズ比は,健康的な食生活の指導で 0.53(95%CI:0.16~1.79,I2=0.0%),抗酸化サプリメント投与で 0.81(95%CI:0.39~1.71,I2=70.1%),レチノール投与で 0.92(95%CI:0.65~1.31,I2=0.0%)であった。

 以上より,健康食品の一部(ビタミン C)が,がん患者の原因特異的死亡率の改善に寄与する可能性が示唆されるものの,今後さらなる研究が求められる。

3 無病生存率(disease‒free survival),無増悪生存率(progression‒free survival),奏効率(tumor response rate)
 本臨床疑問に関連するシステマティックレビューが 2 件ある。
 Posadzki ら21)によるシステマティックレビューでは,前立腺がん患者を対象とした 8件の無作為化比較試験にて,さまざまな栄養素(カルチトリオール,ゲニステイン・ダイゼイン,ビタミン B 群,ビタミン C,ビタミン E,コエンザイム Q10,セレン,緑茶抽出物,イソフラボンリコピン亜鉛など)による腫瘍マーカー(prostatespecific antigen;PSA)への影響について文献的考察を行っている。その結果,これらの健康食品が PSA を低下させることを支持するエビデンスはないと結論づけている。
 Block ら11)によるシステマティックレビューでは,17 件の無作為化比較試験にて,化学療法中の患者への抗酸化サプリメント併用(グルタチオン 7 件,メラトニン 5 件,ビタミン E 1 件,混合物 2 件,エラグ酸 1 件,N—アセチルシステイン 1 件)による奏効率への影響について文献的考察を行っている。その結果,有効性を示唆する報告は,それぞれ,グルタチオンで 3 件,メラトニンで 3 件,ビタミン E で 0 件,混合物で 0 件,エラグ酸で 0 件,N—アセチルシステインで 1 件であったがメタアナリシスは行われていない。

 以上より,健康食品の一部が,がん患者の化学療法の奏効率改善に寄与する可能性が示唆されるものの,今後さらなる研究が求められる。

その他、本書ではマッサージ、アロマテラピー・マッサージ、運動療法ホメオパシー、アニマルセラピー、リラクセーション、音楽療法鍼灸治療、ヨガの効果についても詳細に論文レビューを行なっている。

また、治療方法のトピックスとして

1 栄養療法,経腸栄養剤
2 免疫療法
3 漢方薬
4 高濃度ビタミンC点滴療法

にも言及されているので、システマティックレビューを知りたい方は参考にされたし。

金原出版