フアイアについて調べている

中国の抗がん新薬「フアイア(Huaier)」は可能性がありそうな気がする

【試験管内&生体実験】フアイアはシグナル伝達経路を介して乳がんの進行を抑制する

中国でフアイアにおける乳がんの研究を進めているチームが最新の論文を発表した。フアイアのがん抑制システムはなにがどこに作用して起きているのかを解明しようとしている一つである。

Frontiers in Oncology誌のインパクトファクターは4.416。

研究の原文はこちら。図版も豊富だ。

概要

Trametes robiniophila Murrとして知られるフアイアは、伝統的な漢方薬です。 フアイアは癌の進行を抑制し、患者の予後を改善できることがさまざまな研究で実証されています。 本研究では、フアイア処理した乳癌細胞におけるlncRNA、miRNA、およびmRNAの発現プロファイルを包括的にスクリーニングしました。 バイオインフォマティクス分析を使用して、ハブ遺伝子が特定され、機能的に注釈が付けられました。 フアイアの影響を受けた分子ネットワークを構築するために、加重遺伝子共発現ネットワーク解析が適用されました。 その後、Linc00339はHuaierを介した癌抑制に重要な役割を果たすことがわかりました。 linc00339の効果を検証し、下流のターゲットを特定するために、試験管および生体での実験を実施しました。 最後に、フアイアがlinc00339 / miR-4656 / CSNK2Bシグナル伝達経路を調節することにより、乳癌細胞の増殖を阻害できることを確認しました。

イントロダクション

フアイアは、これまでの実験で結腸癌、線維肉腫、子宮頸癌などのさまざまな腫瘍で強力な抗腫瘍活性を示すことを示す証拠が増えています。 多施設共同無作為化臨床試験で、フアイア顆粒は、根治的外科的切除を受けた肝細胞癌HCC)患者の無再発生存期間を大幅に改善し、肝外再発を減少させる可能性があります。 肺癌では、フアイアはアポトーシスと細胞周期停止を誘導することにより、癌細胞の増殖と転移を抑制しました。 MTDH、JAK2 / STATS、およびMAPKシグナル伝達経路は、フアイアの阻害効果に関与していました。 さらに、フアイアはPI3K / AKTシグナル伝達経路の活性化を調節し、胃癌細胞におけるサイクリンB1の発現を調節する可能性があります。

我々の以前の研究は、フアイア顆粒が91.43から112.61ヶ月までの乳がん患者の無病生存期間を改善し、KPSスコアが高く感情的な症状が少ないことを示しました。分子メカニズムをさらに決定するために、フアイア治療後のトリプルネガティブ乳癌細胞の発現プロファイルをスクリーニングし、フアイアのマルチターゲット効果を特定しました。また、フアイア水性抽出物がアポトーシスを誘発し、G0 / G1期で細胞周期停止を引き起こす可能性があることも発見しました。死受容体経路とミトコンドリア経路がフアイアの抗がん効果に寄与しました。 ER陽性乳癌細胞では、フアイアはエストロゲン受容体αシグナル伝達経路を著しく乱し、ヘッジホッグ経路の不活性化を通じて乳癌幹細胞の自己複製活性を阻害しました。さらに、フアイアは、生体実験でマウスに明らかな毒性を与えることなく血管新生を阻害し、mTOR / S6K経路を抑制することでオートファジーを誘導します。

非コーディングRNAは、癌の進行に重要な役割を果たしました。 我々のデータによると、lncRNA-H19 / miR-675-5P / CBL軸はHuaier抽出物の阻害効果に関与していました。 ただし、乳癌細胞のフアイアによって引き起こされる競合する内因性RNA(ceRNA)ネットワークは研究されていません。 ここでは、フアイア処理乳がん細胞におけるlncRNA、miRNA、およびmRNAの発現プロファイルを分析しました。 バイオインフォマティクス分析により、linc00339はフアイア抽出物の機能におけるハブ遺伝子として同定されました。 公共のデータベースを使用して、linc00339とその下流のターゲットの臨床的意義が発見されました。 最後に、試験管内および生体での実験により、linc00339 / miR-4656 / CSNK2Bシグナル伝達経路がフアイア抽出物の抗がん効果に重要な役割を果たすことが確認されました。

 

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Linc00339は、生体実験でフアイアに対する乳癌細胞の化学療法抵抗性を誘発しました。 (A)フアイアは、MDA-MB-468、MCF7、およびMDA-MB-231でlinc00339の発現レベルを低下させました。 (B)MDA-MB-231でのlinc00339過剰発現のトランスフェクション効果。 (C)linc00339の過剰発現は、MDA-MB-231のフアイアの細胞毒性を阻害しました。 (D)生体実験アッセイは、linc00339がフアイアの効果を抑制することを示しました。 (E)4つのグループの腫瘍重量。 (F)4つのグループの腫瘍体積の成長曲線。 (G)Transwellアッセイは、MDA-MB-231細胞の移動を示しました。 実験は3回繰り返され、データは3つの別々の実験の平均値±SDとして示されました。 * p <0.05; ** p <0.01。

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フアイアは、linc00339 / miR-4656 / CSNK2Bシグナル伝達経路を介して乳癌の進行を抑制しました。 フアイアは、linc00339のレベルを下げました。 Linc00339はmiR-4656をスポンジ化してCSNK2Bの機能を強化、それによって乳癌の進行を加速するものです。

研究結果による考察

私たちの研究によると、linc00339は正常上皮細胞と比較して乳癌細胞株で増加し、linc00339はmiR-377-3pの調節を通じてトリプルネガティブ乳癌の進行を促進する可能性がありました。本研究では、さらにフアイア誘発細胞毒性に対するlinc00339の効果の基になるメカニズムを調べた。共発現分子ネットワークから、複数のmRNAがlinc00339と相関することが示されました。

重みに従って、候補mRNAの臨床予後への影響を評価しました。 CSNK2BおよびGRPEL1が識別されました。 linc00339の過剰発現により、CSNK2Bのレベルが増加し、GRPEL1のレベルが減少しました。パブリックデータベースとルシフェラーゼアッセイの検索により、linc00339 / miR-4656 / CSNK2Bシグナル伝達経路が見つかり、機能獲得実験により、linc00339 / miR-4656 / CSNK2B軸がHuaierの機能の調節に重要な役割を果たしていることが示されました。

本研究では、バイオインフォマティクス分析を使用し、コアのシグナル伝達経路がフアイアの機能を媒介することを特定しました。 試験管および生体実験を使用して、linc00339 / miR-4656 / CSNK2B軸の生物学的機能が確認されました。したがって、私たちの研究は、ハイスループットスクリーニングデータの分析のためのリファレンスと、乳がんの治療における新しいシグナル伝達経路を提供しました。 フアイアの責任成分を特定し、可能な分子メカニズムを調査するには、さらなる調査が必要でした。

 

【医療法広告違反事例】セカンドオピニオンは標準治療を否定するものではない

医療法無視の悪質サイトを発見

久々に腹立たしいサイトを見つけた。むしろ腹立たしいを通り越して呆れている。

実は先日「がん」関連のキーワードで検索していて出てきた広告がある。

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セカンドオピニオンをうたっているが…

それにより行きつくサイトが以下である。

second-opinion-munakata.com

マチュア感甚だしいサイトであるが、この御仁が作っているとは思えない。医師自ら自分の名前のあとに「医師」とはなかなかつけないだろう。どこかのクリニックに所属している一員として、若干へり下り気味に使うような場合が多いと思う。実際の医師が作ったのではなく、ブランディングのコンサル(それもプロ中のプロではない)が医療界のルールも知らずに作ったのだと思う。

Google広告から受ける第一印象は、「ネットによるセカンドオピニオンサービスの紹介」。同様の業態は数社あるが、この宗像医師のサイトは本人が顔を出している点で、その点では好感が持てる。

しかしそれ以外は誇大な説明や、肝心なところを書いていないなど、あまりにも幼稚なサイト作りなのである。はっきり言って医療法違反のオンパレード。一部については後ほど取り上げたい。

病院(クリニック)が広告できる内容とは

クリニックが集客を目的として告知できる事項は以下に限られる。

一 医師又は歯科医師である旨

二 診療科名

三 病院又は診療所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項並びに病院又は診 療所の管理者の氏名

四 診療日若しくは診療時間又は予約による診療の実施の有無

(中略)

七 当該病院又は診療所において診療に従事する医師、歯科医師、薬剤師、看護師その 他の医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴その他のこれらの者に関する事項で あつて医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大 臣が定めるもの

八 患者又はその家族からの医療に関する相談に応ずるための措置、医療の安全を確保 するための措置、個人情報の適正な取扱いを確保するための措置その他の当該病院又 は診療所の管理又は運営に関する事項

九 紹介をすることができる他の病院若しくは診療所又はその他の保健医療サービス若 しくは福祉サービスを提供する者の名称、これらの者と当該病院又は診療所との間に おける施設、設備又は器具の共同利用の状況その他の当該病院又は診療所と保健医療 サービス又は福祉サービスを提供する者との連携に関する事項

(中略)

十一 当該病院又は診療所において提供される医療の内容に関する事項(検査、手術そ の他の治療の方法については、医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資す るものとして厚生労働大臣が定めるものに限る 。(後略)

(出典:医療法 第6条の五)

極論、医師の名前、所在地、電話番号等、診療科目、診療時間、入院設備の有無ぐらいしか言えないのである。よく駅などにある病院の広告看板。あの程度が精一杯なのだ。

それは自分のサイトであっても集客を目的とする場合は同様で、最近ホームページ製作会社が「自サイトならなんでも言える」として宣伝している例があるが、全くの嘘なので注意してほしい。

宗像久男医師公式ホームページの違反内容

医療法の病院広告の考え方は時代とともにその時代に合わせたものになっている。その指針が、厚労省のお達し、すなわち「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 (医療広告ガイドライン)」である。医療に関する発信を行うものであれば必ず目を通しておきたいものであるが、今回のクリニックではその様子が全く見られない。具体的な違反内容は下記の通り。

●トップページ

「目覚ましい結果」→誇大広告。具体的な根拠は?

「特別なガン撃退治療」→具体的には?どこで行う?自費の場合、金額の目安は?

「宗像先生」「顧問 宗像久男」→自分のクリニックなのに先生?顧問?誰がどこで治療を行う?

「新宿で面談」と書いているにも関わらず、「お越しの際は以下の住所を」とあるのは日野市。

●診療内容について

「希望が持てる」→効果の保証になりアウト

●患者様からのお声

全面的にアウト。

第3-1(5)
患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
省令第1条の9第1号に規定する「患者その他の者の主観又は伝聞に基づく体験談を広告をしてはならないこと」とは、医療機関が、治療等の内容又は効果に関して、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく主観的な体験談を、当該医療機関への誘引を目的として紹介することを意味するものであるが、こうした体験談については、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがあることを踏まえ、医療に関する広告としては認められないものであること。

こういうのは都合のいい情報なのである。がん患者が1000人いれば1人くらいは何もしなくても一時的に良化したり、映像からがん腫瘍が消えたりするのである。だから何人中何人どうなったのか、きちんとしたデータを出さねばならないのである。

さらにがんの場合は5年であったり10年、15年生存率という指標も重要になる。これらの患者さんが何年生存したのか、常識的な情報はいっさいどこにも書いてないのだ。このクリニックの治療を検討される方はその辺の数字も問い合わせてみるといいだろう。

このクリニックで行われる治療とは

まったくもって診療内容不明のこの外来であるが、どんなことをするかこの患者様の声

にヒントがありそうだ。

「宗像先生の治療」「食事療法」「代替治療」「栄養を細胞に与える」「抗がん剤を途中でやめて」「自分で栄養や体を温めること」というキーワードが散見される。この医師が登場するYoutubeや書籍の内容も少し見てみたが、標準治療をやめて食事療法で時自己治癒力を高めるというものであった。それ以外に行われるだろう「特別なガン撃退治療」はまったくわからない。おそらく自費であろう。

セカンドオピニオンとは標準治療を否定するものではない

気になる表記はまだある。

末期ガンと宣告されどうすれば良いかお困りになっている方や、自己流の食事療法でうまくいかない方など患者様の困り事をすべて解決していくことを目標とするーそれが当院のセカンドオピニオンです。

セカンドオピニオンとは本来、主治医とは別に、フラットな視点で患者の状況を把握し、現在の治療法がその方にあっているかどうか意見するものである。実は、標準治療は全国どこの病院でも大きくは変わらない。セカンドオピニオンをする医師の役割は、主治医と患者の間の溝(主にコミュニケーションロスによるもの)を埋め、基本的には標準治療に理解を深めていただくようなものなのである。

それを標準治療=悪と決めつけ、患者の行なっている治療法を当初から否定し、自己流の治療を押し付けるのはまったくもって患者ファーストではないのである。

もしその治療法が有効であろうならば、学会にて症例報告を行う、試験管やマウスなどの実験、少人数によるパイロットスタディを経て臨床試験を行う、結果を発表するなど、医療界の賛同を得られるような流れにしなくてはならない。

いずれにせよ、この怪しいサイトにてセカンドオピニオンと治療を申し込む者は僅少だと思われるが注意を促したい。

このサイトは医療機関ネットパトロールにて通報しておいた。

iryoukoukoku-patroll.com

参考サイト

東京都福祉保健局「セカンドオピニオンとは」

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/iryo/iryo_hoken/gan_portal/chiryou/second_opinion/about.html

副作用の辛さに漢方の勧め【エビデンスはないが】

いろいろな方の闘病ブログを拝見している。

現在すでに病床にある方はもちろん、治療後、一生懸命生活していらっしゃるお姿などさまざまである。

治療が終わって、一応安心していい経過時間というものがある。胃がんや大腸がんでは5年再発がなければおめでとう、という感じ。それが乳がんだと10〜15年見なければならない。永い闘いだと感じ入っている。

手術前、ある程度がんが育ってしまっていたら、抗がん剤で手術できる大きさまで腫瘍を小さくすることが検討される。手術が終わっても、抗がん剤を内服する治療法がある。この副作用に苦しまれている方が少なくない。副作用を抑える西洋薬が同時に処方されるが、これがなかなか効かない、というか効いていたとしても、不快な副作用はほんの少しあっただけでも、気力体力を奪わせるものである。

副作用のよくあるものとして、全身症状としての、だるさ、食欲不振、低栄養、冷え、浮腫、不眠、不安。個別症状としては、標準治療によって起きるさまざまな副作用や後遺症としての摂食障害、下痢・便秘、口腔乾燥、更年期様症状、手足のしびれ、皮膚や爪の障害、難治性口内炎など様々だ。

そこで少しでもよくなりたいという方に試していただきたいのが漢方である。漢方といえば、効き目が穏やかなイメージや人によって効果があるなしがあったり、気休め程度、と思われている方が多そうだ。

しかし、実際に保険診療の一環として漢方を使われている病院は結構ある。下記のがん研有明病院しかり。

 

www.jfcr.or.jp

自分が考える漢方のメリットは以下の通りだ。

1・西洋医学では無理なものが、漢方でよくなることがある

2・健康保険で処方してもらえる

3・その薬価は西洋薬よりも安い

4・副作用がほとんどない

5・西洋薬と併用できる

6・他の漢方に詳しい医師にかかったとしても主治医を変更する必要がない

補足すると、

1については、西洋医学では症状そのものにアプローチしていくという考え方で、漢方は全身の状態をよくする、という考え方の違いによるものということが大きい。西洋薬では「無理なものは無理!」という判断をされてしまうが、漢方では「少し良くなるかもよ?」という出発点から始まり、そのうち何割からは「とても良くなった!」ということが結構あるのである。過度な期待はできないが、自分に合うものがある可能性がある。まだまだ希望が持てるのである。

2、3についてはその通り。病院処方のエキス剤は、本来煎じ薬や丸薬などである漢方を、煮出して煮詰めて糖類などで顆粒化している。いわばインスタントコーヒーのイメージである。これが街角にある漢方薬店に行ってオーダーメード(といいつつ既存処方そのままか、少々のアレンジ)で煎じ薬を作ってもらうと、月2〜3万円をゆうに超えてしまうから注意だ。漢方に詳しい西洋医によると、「7割は処方薬でOK。効き目も変わりない。処方薬をいくつか試してどうにも効果がないひとだけ、煎じ薬を試してみてはどうか」ということであった。

4の副作用。これも漢方にはほとんど認められない。マオウを取りすぎての胃の不調、ダイオウを取りすぎての下痢、カンゾウによる偽アルドステロン症、ブシによる動悸、不整脈、ほてりくらいなもので、漢方に詳しい医師であればそれらをじゅうぶんに検討して処方してくれる。

今処方されている西洋薬を止める必要はないし、主治医とは別の医師に漢方処方だけを依頼するのもOKだ。ただその場合は主治医に何を飲んでいるかぜひ話してほしい。

漢方のデメリットをあげるなら以下の通り。

1・がんの副作用に対する明確なエビデンスがない

2・合わないものは効かない

3・完全に副作用が抑えられることはあまり期待できない

漢方は西洋医学ができる前から、いろいろと生薬を組み合わせてみて体験の数を重ねて生み出されたものである。だから近現代の「エビデンス」という考え方をそもそも持っていない。それでもおかげさまで日本では明治〜大正〜昭和の時代を経て一度は絶滅しそうになった「和漢」が、関係者の努力によって生き残り保険処方されている。そしてそれを実際に使って良さを理解した医師が、エビデンスなど何処吹く風で使っているのである。もし他の民間代替医療を行なっているのであれば、西洋医が認める漢方をおすすめしたい。

そもそも当たる確率は3割くらいらしいので、西洋医は1〜2ヶ月処方してみて合わない人は薬をかえてみる、ということをする。当たっても完全に副作用が抑えられることはまずないが、「飲んでないときよりもラク」「良い感じがする」ということがあるので、メリットデメリットを検討していただいてどっちがよい話かということだと思う。もし我慢できるならそれまでのお悩み、ということだ。

いろいろなブログを拝見しても「こんな漢方使っているよ〜」という方がなかなかいない。それで苦しまれている様子を見ると、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)から使ってみればいいのに、と思う。とりあえず自分で調べてから使ってみたい方は、「がん 漢方」の本を買って、ドラッグストアで補中益気湯とか十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)などの薬を実際に買って使ってみればよろし。良さそうだとなれば、主治医にピンポイントで指定して処方してもらおう。使い分けについては以下の動画が参考になった。

youtu.be

 

大したことない効果を大げさに見せるテクニック【小林製薬シイタケ菌糸体】

がん関連で検索すると、よく出てくる小林製薬のパブリシティ記事。

gan-senshiniryo.jp

蕗書房という、出版社だかネット媒体だかわからないサイトに掲載されている。スポンサーがお金を払って載せたものかよくわからないが、その可能性は高いと思っている。

この記事の結論としては(読者に与えるイメージとして)小林製薬がシイタケ菌糸体サプリを作っていて、がんに不安のある人は小林製薬のシイタケサプリを調べたら?と思わせる作りになっている。

京大大学院出の開発者が出てきて、研究だ実験だととてもマジメに考えていますよ、という印象をもたせるようになっている。

記事を読み進めたら「二重盲検検査」という、一般には耳慣れない単語が出てくる。これは医薬品やサプリの本物と偽薬(プラセボ)を比較する検査で、味も姿形もほぼ同じ2種類を用意する。同じような患者さんを準備して、くじ引きでどちらを飲むか決める。投与する医師も本物か偽薬かわからない。患者も医師もわからないから「二重盲検」なのである。思い込みを排除することによって検査の正確性を担保するものである。

エビデンスレベルとしては非常に高い。信頼度のある検査なのである。この記事でも「二重盲検法はすごいよー」という印象を与えている。ああ、小林製薬はマジメなんだね、と思わせるよい作りになっている。

さて今回はこの記事にツッコミを入れてみる。

1.記事で自慢している研究とは?

 

まず当該記事の「研究の成果」にある

 QOL、免疫低下のモデルにおいて、プラセボ群に比べシイタケ菌糸体摂取群では有意にQOL(QOL-ACD)、免疫抑制状態(Tregの増加)が改善された。

これを解説したい。

もとの論文によると、47人の乳がん患者を無作為に本物と偽薬群に分ける。抗がん剤治療において、すでに広く使用されている副作用を抑える薬とシイタケ菌糸体サプリを併せて摂取するグループと、副作用を抑える薬と偽薬を併せて摂取するグループで、3週間ずつ2クール飲ませてみた。その結果、免疫抑制状態(Tregの増加)とQOLの維持改善がよかった、というものである。

つまり、抗がん剤副作用抑止薬の効果を高めて辛さや症状を緩和し、また、免疫力もアップするよ、と示唆しているのである。 

2.Molecular and Clinical Oncology誌とは

オープンアクセス論文。これは、研究して発表してほしい方がお金を払って掲載してもらうというもの。本来、論文の閲覧にはお金がかかっていたのだが、オープンアクセス誌は社会貢献のため、誰にでも無料で論文を見ていただける、ということが基礎理念になっている。しかし事業のためにはお金がかかるので、それを掲載してほしい方からもらう、という仕組みである。なおこの手法は一般化しており、特に非難されるものではない。

それにしても、Molecular and Clinical Oncology誌は、インパクトファクター(IF)が0.98しかない。1以下の論文誌=権威性がほとんどない、と言える。これは他の研究者から引用される可能性がほとんどない(あまり他の研究者の参考にならない)、とほぼ同義語。論文掲載にあたって、厳密な査読がない、というようなことも低評価の一つだと思われる。

筆者のブログではフアイアの研究をいろいろ紹介しているが、さすがにIFが1以下というものはない。その辺のことを知りたい方は「インパクトファクター 1以下」で検索されるとわかるだろう。

3.二重盲検検査で大事なポイント

記事内では触れられていない(あえて触れていない?)ポイントを解説する。

3−1.エンドポイントをどこに置くか

実は研究の結果というものは作れるのである。1つの実験の際にあらゆる項目を測定し、都合のいい結果だけを発表すればいいのである。どの部分を切り取るかは研究者次第。それでは研究の公平性というものは保てない。

自信がある研究だったり、世のため人のため解明しておく必要があると思った研究は、実は開始前に研究内容を登録する制度がある。有名どころでは、アメリカのClinicalTrials.gov。いつエントリーして、人数を締め切って、などという経過がざっくりではあるがわかるようになっている。研究のアップデートがあれば申請者から更新される。研究が進んでいるかどうか一目でわかるのである。

今回の小林製薬が自慢げに発表している結果は、この登録した形跡がいっさいない。この時点で言わずもがななのである。

エンドポイントとは、治験(臨床試験)における治験薬の有効性や安全性をはかるための評価項目である。有効性があると客観的に判断できるか、また結果に普遍性が認められるかが重要となる。「本当に効果があるかどうかをどこで判別しますか?」ということ。

がんにおいて最強なのは、無再発生存率であり、それに準じるのが、生存率、無再発率、無転移率などであろう。さらにQOLの改善率、副作用の軽減率などもある。今回の研究はこの後者2つを一応の目標としたらしい。

しかし治験の短期間(今回は6週間)では、シイタケ菌糸体がそこまで聞いているかどうかはなかなか実証できない。QOLについてはアンケートを、免疫状態の維持については、NK細胞の活発化やTregの増加という数値で計測して、それにより維持があるのではないかと想定しているのである。

ちなみに当ブログで紹介した「GUTに掲載されたフアイア研究結果」のエンドポイントは、肝臓がん手術後の患者の96週間無再発生存率で有意差、である。

3−2.治験例数も大事

研究にどれだけの人が参加したか、ということ。小林製薬の実験では、50例(人)未満だった。規模で言えば1つの大学や大学病院、基幹病院でできるくらいのケース。国や自治体、大メーカーを巻き込んで数百人規模やそれ以上になると、大掛かりな研究ということが言える。信頼性も大きく異なる。

ちなみに当ブログで紹介した「GUTに掲載されたフアイア研究結果」の治験数はほぼ1,000人で複数の医療機関が協力している。日本ではなかなかできる規模ではない。研究者であればぜひ行ってみたい大掛かりな規模だ。

4.今回の研究の要旨

副作用抑止剤と併せてシイタケ菌糸体を飲んだ場合、患者さんのQOLは、プラセボ群よりも良かった。

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図1.-調査中のQOLスコア。 QOLは、生物学的反応修飾因子(FACT-BRM)バージョン4を投与された患者の癌治療の機能評価によって測定され、アンケートのスコアから評価されました。 表示されている測定値は、平均値±標準誤差です。 各グループ内の変動は、最初のコースの1日目と比較して、スティールテストとクラスカルワリステストによって分析されました。 * P <0.05; ** P <0.01。 (A)合計スコア、(B)FACT-G合計スコア、(C)PWBスコア、(D)FWBスコア。 QOL、生活の質; LEM、Lentinula edodes菌糸体エキス; PWB、身体的幸福; FWB、機能的幸福; FACT-G、がん治療の機能的評価の一般的な尺度。

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図2.-研究期間中の末梢血のCD4陽性細胞における制御性T細胞(Treg)。 CD4陽性細胞中のCD25陽性FoxP3陽性細胞の割合を、フローサイトメトリーを使用して測定しました。 この図は、ベースラインからの値の変化を示しています(最初のコース、薬物投与前の1日目)。 測定値は平均値±標準誤差として表示されます。 黒いバー、LEMグループ。 白いバー、プラセボグループ。 ボンフェローニの補正対最初のコースの1日目を用いて、一元配置分散分析を繰り返して、各グループ内の変動を分析しました。 * P <0.05; ** P <0.01。 2つのグループ間の変動は、対応のないt検定によって分析されました。 LEM、Lentinula edodes菌糸体エキス; FoxP3、フォークヘッドボックスp3。

 NK細胞活性は、化学療法の最初と2番目の両方のコースの8日目に、両方のグループのベースライン値から有意に減少しました。 LEM(シイタケ菌糸体)グループでは、2番目のコースの22日目にNK細胞の活性も低下しました。末梢血CD4 +細胞(FoxP3 + CD25 + / CD4 +)のTregの割合は、最初の化学療法コースの8日目にLEM群で有意に減少しました。プラセボ群では、その割合は両方の化学療法コースの22日目のベースライン値から有意に増加しました。 LEMグループでさえ、割合は2回目の化学療法コースの22日目のベースライン値から有意に増加しましたが、その増加の程度はプラセボグループと比較して低くなる傾向がありました(図2)。 Th1 / Th2バランスは、LEMまたはプラセボグループのいずれにおいても有意な変化を示しませんでした。

研究の原文はこちら

5.まとめ

小林製薬のシイタケ菌糸体は、抗がん剤治療の際に、副作用抑止薬と一緒に服用すると、じゃっかん調子がいい可能性がある。

抗がん剤でダメージを負ったNK細胞も少し改善しやすいかもしれない。それによって抗がん剤の効きが良くなるか悪くなるかは不明。

・がん治療そのものに効果があるかどうかも全く不明

・少しでも調子がいい方法を望まれる方は、費用も高くないだろうから試してみてもいいかもしれない。

・担当者は京都大学大学院を出て、研究レベルが誇れるものかどうかわかってるのにあえて言ってないのだな、と。

医薬品と食品の彼我【厚労省資料「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」より】

医薬品と食品は何が違うか。

医薬品は製造販売広告の管理に、厳密な法の規制を受ける代わりに、認められた「効果効能」を謳うことができる。食品は比較的自由だが効果効能を謳うことができない。それを想起させるような表現もかなり規制される。

「食品は医薬品と混同されないように」がお上の考え方である。食品であるからにして、個人が好みに応じてどれだけとってもよい。つまり「効果効能がない」と厚労省がお墨付きを与えたことになる。

さて、 無承認無許可医薬品の指導取締りについて、という書類がある。初出は昭和46年6月1日。各都道府県知事にあてて厚生省薬務局長が通知したものだ。以後数年に一度改定されて現在に至っている。

原文はこちら。https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/diet/dl/torishimari.pdf

当初は、冒頭にある通り、明らかに医薬品なのに、食品のフリをして流通しているものがあるから、それを医薬品の規制を受けさせるようにしたい、という趣旨のものであった。

月日が経ち、情勢が変わって来た。今では「効果効能がないのに医薬品のフリをして消費者を騙す」ようなシロモノが中心になったのだ。飲むだけで痩せる薬、アトピーが治るクリーム、ガンが消えるサプリメント…。

そこでこの資料が、食品の誇大な表現を抑えるための指針となっているのである。

また巻末に別添として、膨大な数の食品や栄養素の一覧がある。これがここの食品の効果あるなしの判断に使えるのである。

まず別添2。これは、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」である 。モノによってはある部位は「医」(=医薬品)で、別の部位は「非医」「非」(=食品)となっている。

一例:カッコン

根は「医」。種子・葉・花・クズ澱粉は「非」。葛とも書く。旺盛な繁殖力で、ツルが雑草地を埋め尽くして伸びていることがある。

このカッコンの根は葛根湯などに用いる生薬である。かぜ薬,解熱鎮痛消炎薬とみなされる処方に配合されていることが多い。しかし一方で、このカッコンから採取されたデンプンは葛湯などに用いる。ただのデンプンであるからにして、葛湯を腹一杯食ったところで調子が良くなるとか副作用が出るとかそういうことはない。まったくないわけではないかもしれないが、極めて少ない。

一例:アロエ

葉の液汁は「医」。根・葉肉は「非医」、キダチアロエの葉は「非医」。アロエヨーグルトに入っているのは非医の葉肉。これが葉の液汁を使うようになると食品の範疇をこえて医薬品領域になり、さらに厳しい規制を受けることになる。一方で既存のアロエヨーグルトは、アロエの薬効をイメージさせるような売り方はできない。買う方が勝手に体に良さそうだ、と思い込んでいるだけなのである。

アロエベラの葉の液汁、また表皮のすぐ下には、大腸を直接刺激して腸蠕動を促進させ、下痢をひきおこす下剤成分であるアロインが含まれている。これが医薬品。ヨーグルトに使用するのは、このアロインが含まれていない部分である。

一例:カワラタケ

菌糸体は「医」。子実体(よくみるキノコとしての形の状態)は「非医」。カワラタケの菌糸体培養エキスは、抗がん剤の原料になっていた。その後、薬効が認められず、製造もされていないのだが、その認可は取り消されていない。子実体は「非医」。スーパーで売っていたとしても、普通にキノコとして食べて薬効も問題もありませんよ、ということ。

面白いのはパイナップルで、これは明確に食品。しかし、食べ過ぎると舌がピリピリする。これはパイナップルに含まれる、パパインという消化酵素によるもので、舌や口内が負ったダメージは皮膚が再生されるまで有効な治療法はない。

この指針では、パパイン・ブロメライン等消化酵素は「医」になっている。パイナップルにはぜひ食べ過ぎに注意、1回に何切れまで、と書いておいてほしいものである。

さて、別添3の文書になると、「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」となり、名目の意味合いが変わってくる。これはつまり、その成分本質(原材料)は専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)ではないと判断したものであり、もし効果効能を標榜したり、想起させるようなことがあれば未承認医薬品として処罰の対象となるのである。

ここには、健康食品で効果がありそうだと思い込まされているものがいっぱい出てくる。

アガリクスクロレラ、シイタケ(菌糸体も)、スピルリナメシマコブ、軟骨…。これらは、食品であるからにして自由に売っていいし、摂取制限も特にない。効能効果があるように言っちゃ絶対にだめだよ、と言われているのである。残念ながら著者が愛するビール酵母もここでは食品扱いであった。

とにかく気になる栄養素や食品は一度参照してみることをお勧めする。

 

 

 

【メタ分析】早期乳がん8,578人の治療結果から見る抗がん剤の有効性

以前の記事でフアイアの肝臓がん手術後の1,000例規模研究の有意性について紹介した。96週経過後にフアイア使用群の方が10%くらい無再発生存率が高かったのである。

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フアイアの使用群と非使用群の差

「え?たった10%?」と思われるかもしれないが、医療の世界ではこれは大きな差なのだ。極論「抗がん剤もだいたいそれくらいの数字だよ」と言えるくらいの感覚である。有意差というのはそういうことである。

一つの研究を紹介したい。抗がん剤を使うと使わないでどれくらいの差があるのか、という研究発表である。もちろん癌の種類や程度、個人差によって使われる薬は異なるし、一概にはなかなか言えない。しかし、皆さんの抗がん剤に対する効果のイメージと医療の現実の差をご理解いただくために、代表的な疾患で、一例を紹介したい。

2011年12月に、著名論文査読誌「LANTIS」(インパクトファクター58!)に、早期乳がん患者合計10万人を対象にした123のランダム研究をまとめたメタ分析結果が発表された。

いくつかの結果があるが、その中の一つが、8,575人で比較した、「アントラサイクリン」という抗がん剤治療をした人と、まったく抗がん剤を使用しなかった人の10年以上の死亡率である。結論からすると以下のグラフになる

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抗がん剤を使用した時とそうでないときの乳がんの死亡率

その差はわずか5%なのである。どちらも当然他の治療法を行う。それをした上で、このアントラサイクリンという抗がん剤は5%有意差があるので、効果がありますから、抗がん剤として使用できますよ、ということになる。死なない、ということを考えればぜひ使うべきなのである。もちろん副作用は発生することを承知の上で。

免疫療法で有名なオプジーボも、それ以前の抗がん剤との比較はネット上に数多ある。検索キーワード、「オプジーボ 添付文書」をみると良い。これもせいぜい20%程度良いもので、決して「末期ガンが必ず治る夢の薬」というシロモノではない。

これからみても先ほどのフアイアの有意性は素晴らしいことになる。フアイアでも後ろ向き研究だが、乳がんの患者さんへの研究もある。そのグラフは下記の通り。

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フアイア使用群と使わなかった群の比較

フアイアには目立った副作用はない。このことからも優れた素材ではないかと考えられうるのである。

LANSETの研究論文は以下のリンクから。

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(11)61625-5/fulltext

米国食品医薬品局(FDA)は、がんの治療薬としての静脈内高用量ビタミンC点滴の使用を承認していない

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高濃度ビタミンC点滴が抗がん剤の治療効果を高めたり、QOLをあげるように喧伝されている事例を多く見受ける。

実際、点滴というものは素晴らしいもので、脱水症状のときに生理食塩水を、疲労の時にブドウ糖を静注するなどすると、數十分から数時間で生まれ変わったような効果を感じることができる。

他の疾患で闘病している際にも、なんらかの点滴を行うことで調子がよくなることを感じることは不思議ではない。その効果は数時間〜数日間継続し、その後は元どおりになったとしても、「点滴を打ってもらうと調子がいい!」ということはよくあることなのである。

ちなみに疲労感軽減程度の点滴なら自費診療で3,000円くらいで静注してもらうことができる。

さて、高濃度ビタミンC点滴だがこの治療(?)法が生まれた米国ではどのように認識されているか。米国がん研究所(NCI)が2019年1月にアップデートした資料を翻訳してお伝えしたい。原文にあるPDQ®︎とは、医師データクエリと訳されるもので、NCIの情報提供サービスの一つである。

High-Dose Vitamin C (PDQ®)–Patient Version

概要

ビタミンCは、食品および栄養補助食品に含まれる栄養素です。 それは抗酸化物質であり、コラーゲンの作成にも重要な役割を果たします(質問1を参照)。

高用量のビタミンCは、口から摂取するか、静脈内(IV)注入(静脈から点滴を行うこと)で投与します。 静脈内注入で摂取した場合、ビタミンCは同じ量を口で摂取した場合よりも血中濃度が高くなることがあります(質問2を参照)。

がん患者におけるIV高用量ビタミンCのいくつかの研究では、QOLの改善と副作用の減少が示されています(質問4を参照)。

一般に、IVで与えられた高用量のビタミンCは、臨床試験でほとんど副作用を引き起こしていません。 ただし、IVビタミンCは、腎疾患、G6PD欠乏症、またはヘモクロマトーシスの患者に深刻な副作用を引き起こす可能性があります(質問5を参照)。

米国食品医薬品局(FDA)は、がんの治療薬としてのIV高用量ビタミンCの使用を承認していません(質問7を参照)。

高用量ビタミンCに関する質問と回答

質問1・高用量ビタミンCとは何ですか?

ビタミンCは、オレンジ、グレープフルーツ、パパイヤ、ピーマン、ケールなどの食品、または栄養補助食品に含まれる栄養素です。ビタミンCは抗酸化物質であり、フリーラジカルによって引き起こされる細胞の損傷を防ぐのに役立ちます。また、酵素の働きでコラーゲンの生成に重要な役割を果たします。ビタミンCは、L-アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩とも呼ばれます。

質問2・高用量ビタミンCはどのように投与または摂取されますか?

ビタミンCは、点滴静注で投与されるか、口から摂取されます。ビタミンCを静脈内投与すると、はるかに高い血中濃度に達します。静脈内(IV)注入によって与えられる場合、ビタミンCは口から摂取される場合よりも血中のより高いレベルに達する可能性があります。

質問3・高用量ビタミンCを使用して、実験室や動物での研究が行われましたか?

実験室での研究では、腫瘍細胞を使用して物質を検査し、抗がん作用がある可能性があるかどうかを調べます。動物実験では、薬物、処置、または治療が安全かつ効果的かどうかを確認するためにテストが行​​われます。物質が人でテストされる前に、実験室と動物の研究は動物で行われます。

実験室と動物の研究は、高用量のビタミンCの効果をテストしました。実験室の研究は、ビタミンCの高レベルが癌細胞を殺すかもしれないことを示唆します。高用量ビタミンCを使用して行われた実験室および動物研究に関する情報については、高用量ビタミンCの医療専門家版の実験室/動物/前臨床研究セクションを参照してください。

質問4・高用量のビタミンCの研究は人々で行われましたか?

がん患者に単独で、または他の薬物と組み合わせて投与された高用量ビタミンCのいくつかの研究には、以下が含まれます:

IVビタミンC単独の研究

2つの研究により、IVビタミンCを投与された患者は、投与されなかった患者よりも生活の質が良く、副作用が少ないことがわかりました。

健康なボランティアとがん患者の研究では、ビタミンCは、腎結石、他の腎疾患、またはG6PD欠乏症のない患者で最大1.5 g / kgの用量で安全であることが示されました。研究では、血中のビタミンCレベルは、経口投与よりもIV投与の方が高く、4時間以上持続することも示されています。

IVビタミンCと他の薬物の併用に関する研究

IVビタミンCと他の薬剤との併用の研究では、さまざまな結果が示されています。

進行膵癌の患者14人を対象とした小規模研究では、化学療法と標的療法(エルロチニブ)とともにビタミンCの静注が行われました。 5人の患者は治療中に腫瘍が成長し続けたため治療を完了しませんでした。治療を完了した9人の患者は、画像検査により示されるように疾患をもったままでいました。患者はビタミンC治療による副作用がほとんどありませんでした。

進行性膵臓がん患者9人の別の小規模研究では、各治療サイクル中に週4回、週2回、IVビタミンCとともに3週間、週1回化学療法が行われました。これらの患者では、この病気は平均6ヶ月以上進行しませんでした。併用療法では深刻な副作用は報告されていません。

進行卵巣がん患者27人を対象とした2014年の研究では、化学療法単独と化学療法およびビタミンCが比較されました。化学療法中および化学療法終了後6か月間、ビタミンCが投与されました。 IVビタミンCを投与された患者は、化学療法による副作用が少なかったです。

難治性の転移性結腸直腸癌または転移性黒色腫の患者は、他の薬剤と組み合わせたIVビタミンCで治療されました。治療には抗がん効果がなく、治療中に腫瘍は成長し続け、患者には深刻な副作用がありました。これらの研究には比較群がなかったため、IVビタミンCが副作用にどの程度影響したかは不明です。

2つのパイロット試験で非小細胞肺癌または多形性膠芽腫の患者に標準治療とビタミンCの静注を行いました。患者は対照群と比較して全生存率が高く、副作用が少なかったです。IV高用量ビタミンCを他の薬剤と組み合わせる研究がさらに行われています。

質問5・高用量のビタミンCから副作用やリスクが報告されていますか?

IV高用量ビタミンCは、臨床試験でほとんど副作用を引き起こしていません。ただし、高用量のビタミンCは、特定の危険因子を持つ患者に有害な場合があります。

腎疾患の既往がある患者では、高用量のビタミンCで治療した後に腎不全が報告されています。腎臓結石を発症する可能性が高い患者は、高用量のビタミンCで治療すべきではありません。

症例報告は、溶血(赤血球が破壊される状態)を引き起こす可能性があるため、G6PD欠乏と呼ばれる遺伝性疾患の患者に高用量のビタミンCを投与すべきではないことを示しています。

ビタミンCは鉄を体内で吸収しやすくするため、ヘモクロマトーシス(体が必要以上の鉄を摂取して蓄積する状態)の患者には高用量のビタミンCは推奨されません。

質問6・抗がん剤による治療に高用量ビタミンCを追加することで、薬物相互作用が報告されていますか?

薬物相互作用は、他の特定の薬物と併用した場合に薬物が体内で作用する方法の変化です。高用量のビタミンCを特定の抗がん剤と組み合わせると、抗がん剤が効かない場合があります。これまでのところ、これらの影響はいくつかの実験室および動物研究でのみ見られています。高用量ビタミンCの使用中の薬物相互作用に関する情報については、医療専門家向けの高用量ビタミンCの副作用セクションを参照してください。

質問7・高用量ビタミンCは、米国のがん治療薬としての使用が米国食品医薬品局によって承認されていますか?

米国食品医薬品局(FDA)は、がんの治療薬としての高用量ビタミンCの使用を承認していません。 FDAは、栄養補助食品が販売される前に安全または効果的であることを承認していません。栄養補助食品を製造する会社は、それらが安全であり、ラベルの主張が真実であり、消費者を誤解させないことを確認する責任があります。サプリメントの製造方法は規制されていないため、高用量ビタミンCのすべてのバッチとブランドが同じではない場合があります。

原文は以下のリンクから。

High-Dose Vitamin C (PDQ®)–Patient Version was originally published by the National Cancer Institute.”

結論としては、

・高濃度ビタミンC点滴は、抗がん剤の副作用を軽減し、QOLを改善する可能性がある

・高濃度ビタミンC点滴は、副作用がほとんどない

・研究室内の実験では抗がん作用がある可能性も示唆されているものがある

・ある種の疾患を持つものには高濃度ビタミンC点滴で重篤化させる可能性がある

・高濃度ビタミンC点滴は一部の抗がん剤の効果を低減または無効化させる可能性がある

・2019年1月時点でFDAは高濃度ビタミンC点滴をがんの治療薬として承認していない

ヒトによるエビデンスレベルの高い大規模臨床試験が待たれるところであろう。